着床前スクリーニング(PGS)


着床前スクリーニング(PGS)は何でしょうか?


着床前スクリーニング(Preimplantation Genetic Screening; PGS)とは、体外受精により得られた胚盤胞の一部を生検し染色体の数を検査することです。

体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)で受精卵を胚盤胞まで培養後、顕微鏡下で胚盤胞のTE細胞の一部を検体として採取します。採取した検体に対して、NGS技術(Next Generation Sequencing)を持って染色体数や構造の分析を行い、「染色体の異常がないか」を行う検査です。







着床前スクリーニング(PGS)を実施するメリットは何でしょうか?


9割の早期流産(「9週の壁」を乗越えられなかった妊娠)の原因は、受精卵の染色体異常によることだと言われています。

従って、移植する際には、「染色体異常」がある受精卵を排除できれば、流産率を低下させることになります。またこれによって、治療患者の妊娠率を向上させる同時に、治療効率を上げることもでき、患者様の金銭面や時間をある程度押させることができます。


着床前スクリーニング(PGS)実施にあたって、デメリットは何でしょうか?


PGS技術が30年前の技術で決して新しいものではありませんが、発見当初から賛否両論があるため、今日まで臨床応用をされることが躊躇されている状態です。PGS技術自身も独自の制限を持っているため、否定の意見を持つ先生たちは、主に以下にリスクを考慮するためです。

・検体細胞を採取することによる胚盤胞本体へのダメージのリスクがある
・検体細胞が受精卵の「一部の細胞」のため、結果が異常なしだとしても受精卵全体の染色体異常がないという保証ができない(偽陰性)。一方、逆に偽陽性によって正常受精卵を廃棄してしまうリスクもある
・検査するため(検体細胞を採取のため)には必ず胚盤胞まで培養する必要があり、初期胚(Day3)の移植ができなくなる
・異数性胚ばかりの場合は、なかなか移植に進めず、患者様に精神的にダメージを与えてします


PGS実施する方法やプロセス


1. 体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)で採卵、受精、胚盤胞(採卵後5~7日)まで培養
2. 検体を採取(培養士が顕微鏡下で実施、胚盤胞からTE細胞を採取)後、検査機関に送付;胚盤胞本体を病院内に凍結保存
3. PCR法を利用して染色体の増幅検査実施(基本的に専門検査機関で実施)
4. NGS技術(Next Generation Sequencing)を持って染色体の解析
5. 検査結果を患者様に返す(約1か月前後)













PGSの結果について 


いくつか例を持ってPGSの結果を説明します。 

[ 図1 ]  染色体異常無
染色体1本目~22本目まで増幅頻度が基準線付近に集中し、23本目の性染色体がXとYの各1ほんで赤い線(モノソミー)にある。



[ 図2 ]  染色体異常胚
9本目3倍体(トリソミー)、18本目1本のみ(モノソミー)、性染色体(23本目)3本(XXY計3本)である。


[ 图3 ]  モザイク(異常とは言えない)
3本目が3倍体性モザイク、16本目が1本性モザイク。モザイクとは、染色体正常の細胞と以上の細胞が混在する現象です。



重要な検討ポイント


1. モザイク胚
モザイク胚の処置が臨床上の悩ましいポイントになります。異常が発生する染色体や程度にもよりますが、元気な赤ちゃんが生まれる可能性が十分高いです。「移植の優先順位を少し下げてもいいが廃棄対象にはならない」、これはほとんどの先生のご意見になります。

2. 染色体異常の原因
染色体異常の発生するスキームについて、現時点には完全に解明されていません。推測の原因をわかりやすく説明すると、
■ 卵子と精子が正常に受精直後、受精卵内に2つの原核を持って(2pn、精子原核1個と卵子原核1個)、それぞれ23ペアの染色体、計46ペアの染色体を持っています。その後の成長過程中(外観上では細胞分割)、卵子由来の染色体と精子由来の染色体をコピーしながら46ペアから23ペアまで減数分裂を行い、受精卵の染色体異常は、このプロセスの中で発生します。
■ 問題発生するスキームを完全に解明していませんが、何等かの原因でコピーと減数分裂のペースがうまく同調できず、単倍体や三倍体が発生してしまったと推測します。
■ 染色体正常の父親と母親も、染色体異常の受精卵を作るのは全然おかしいことではありません。
■ 尚、下記グラフで示すように、女性の加齢に伴って染色体異常胚の発生する比率が上昇します。従って、加齢による卵子の質が下がることが胚染色体異常が発生する一つ推測原因になります。


























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