イノシトールと女性不妊
更新日:5月21日
今回は、イノシトールにおける女性の不妊治療分野の臨床試験について取り上げます。
イノシトールとは
イノシトールは糖アルコールの一種で、体内でグルコースから合成されるビタミンB様物質です。イノシトールは、レシチンの内因性産生を刺激し、神経系の脂肪や糖の代謝、および細胞活動をチェックする機能が示されています。体内で合成される以外に、成人がお米など穀物のぬかや豆類などから摂取するのに対し、乳幼児は母乳から補充されることになります。現在、イノシトールは医薬部外品・栄養ドリンク・健康食品・ダイエット飲料・乳幼児粉乳・化粧品等に幅広く使用されています。
イノシトールを女性不妊治療に研究されたご背景
イノシトールを女性の不妊治療に応用する臨床試験が、10年ほど前から活発に実行されています。特に、排卵機能改善の領域には数多く研究論文が発表されています。
排卵障害とは、排卵させるまでの過程に異常がおき、卵が育たない、育ってもうまく排卵できないことを言います。臨床症状として、以下の場合が挙げられます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による不妊:生理が来ない、排卵しない
体外受精の排卵誘発段階:刺激を受けても卵巣が反応しない、又は反応が悪く卵胞が育たない
体外受精の採卵段階:LHサージになって卵胞の大きさも十分あるが、取れた卵が未熟卵もしくは変異卵
排卵のプロセスは複雑なもので、各種女性ホルモンが相互作用しながら完成されるものです。排卵障害の一番重い症状の例として多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)について解説します。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が高インスリン血症と関連していることは、以前の研究から明らかになっています。これにより、代謝性合併症、生殖の罹患率、およびインスリン感受性と抵抗性の関係に関する広範な調査が開始されました。研究によると、インスリンの効果のいくつかは、推定インスリンメディエーターまたはセカンドメッセンジャーとしても知られている推定イノシトール含有ホスホグリカンメディエーターによって媒介されることがわかっています。そのため、イノシトールはメトホルミンとトログリタゾン以外のインスリン感作物質として分類され、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療にも優位性が有ると仮説をし、臨床研究が広く展開されるようになりました。
イノシトール臨床研究論文(一例)のご紹介
イノシトールが女性排卵機能改善の領域において数多く研究論文を発表がされています。今回は、2017年12月に発表された論文を一例としてご紹介をします。
【要約、結論】 イノシトールが体外受精の臨床妊娠率改善に対する評価
要約
ミオイノシトールの前処理は非常に新しいアプローチであり、生殖補助医療における卵巣反応の低下に対処するために、複数の小規模な研究で評価されています。この研究は、卵細胞質内精子注入法(ICSI)または体外受精-胚移植(IVF-ET)による排卵誘発を受けている不妊症の女性におけるイノシトール補給の有効性を決定することを目的としました。
試験概要
総被験者数935名の体外受精を受ける予定の女性に対して7件の試験が実行されました。被験者に、採卵3か月前もしくは排卵誘発初日から採卵決定日もしくは妊娠判定14日目まで、1日当たりミオイノシトール4g+葉酸400μgを内服していただき、対照群は葉酸のみ内服です。
